用神の見極め方~普通格局の身強編
今回は前回に引き続き、用神の見極め方について解説していきたいと思います。前回は普通格局の身弱編でしたが、今回は普通格局の身強の場合の用神取得方法です。
前回、身弱については大まかに分けて『3タイプの身弱がある』と説明しましたが、それは身弱の場合は食傷・財・官の三つが大過する可能性があるためです。
対して、身強については大きく分けて2つのタイプがあります。それは身強の場合は日干を生助する印もしくは比劫のいずれかが大過する可能性があるためです。つまり、印が大過する身強なのか?それとも比劫が大過する身強なのか?といった違いで用神の取り方が異なる、ということになります。
それでは早速、これら二つのタイプによる用神の取り方を見ていきましょう。
普通格局の身強であり、印が大過する場合の用神取得
まずは、『普通格局の身強であり、印が大過する場合』の用神取得の概要から示したいと思います。
命式の様相 | 身強であり、印大過 |
---|---|
用神 | 原則的には財。ただし財にそれなりの力量がある場合は食傷 |
理由 | 財は印を制することができるため |
以上のようになります。たとえば日干が甲木であり、印の水が大過する印綬格のような場合です。そのような命式の場合は、水が命式のバランスを偏らせている源ですので、強すぎる水のエネルギーを中和しなければなりません。そこで必要なのが木にとっての財である土となるわけです。
ただし、もし財の力がある程度あり、なおかつ食傷が全くないような命式の場合は、食傷が用神となることもあります。食傷->財と生じることによって、結果的に印を弱めることができるからです。
また陰陽につきましては、概して陽干が用神となります。上記のように印の水大過の場合は制水能力の高い戊土が用神となりますし、陰の火が大過している場合は制火能力の高い壬水が用神となる、という具合です。
印大過の場合、官は用神にも喜神にもならない
ここで重要なポイントをお話します。普通格局の印大過の命式の場合は、官は用神にも喜神にもならないという点です。なぜなら、官は印を生じるという作用があるためです。もし日干が土であり、印の火が大過しているような場合に、木が巡るとどうなるでしょうか?
木は火を生じるため、それによって強すぎる印がますます強くなり、日干は困窮するという事態に陥るのです。したがって印大過する場合は、官は閑神となります。
次に実例を見てみましょう。
印大過の用神取得実例
辛 | 壬 | 戊 | 辛 |
丑 | 申 | 戌 | 酉 |
以上は私の嫁さんの命式ですが、戌月・土旺生まれの偏官格です。地支には戌・申・酉の金局方合が完成しており、大変金が強いことが分かります。そして金は日干・壬水にとっての印であり、印大過ですから、用神は必然的に金を制する丙火ということになるわけです。※これだけ金が強いと、丁火では全く歯が立ちません。
しかし実際には、印と比劫の力量が拮抗するような場合もあります。そのような場合は何を用神と取るか?という判断が難しくなりますが、まずは五行の数値から正確な力量を計算し、印と比劫どちらが強いのかを正確に知るということ。その上で力量がほぼ拮抗するような場合は、日干との関係を注視し、どちらの方が日干に強い影響を与えているのか?という判断をすると良いでしょう。
たとえば月干に印、時干に印、日支にも印という場合は、たとえ印と比劫の力量が拮抗していたとしても、印のほうが日干に悪影響を与えていることが分かりますので、印を制する財を用神と取りたいところです。
普通格局の身強であり、比劫が大過する場合の用神取得
次は、『普通格局の身強であり、比劫が大過する場合』の用神取得について説明していきたいと思います。まずは概要からご確認ください
命式の様相 | 身強であり、比劫大過 |
---|---|
用神 | 原則的には食傷。ただし食傷にある程度力量がある場合は財。また、食傷+財の気が流通している場合、官が用神となることもある |
理由 | 食傷は比劫の気を洩らすため |
比劫が力を得ている場合は原則的に食傷が用神となります。食傷は強すぎる比劫の気を洩らすことができるためです。特に日干にとって陰陽が異なる傷官は、洩らす力が強いため、比劫大過の場合は用神となる可能性が高いです。
ただし、もし食傷がある程度力を得ており、なおかつ財が弱い場合は、財が用神となることもあります。食傷が二干あり、財が皆無のような場合です。そのような場合は、それ以上食傷が巡っても財がないため発福し難いですから、用神は財です。
また、食傷と財の気が流通しており、なおかつ印が皆無という命式の場合は、稀に官が用神となる場合もあります。官は印を生じてしまうため、印がある場合は用神とはなり得ませんが、比劫大過し食傷・財の気がある場合は、官が有用となることもあるのです。
したがって、比劫が大過する普通格局の場合は、厳密には用神の取り方は三種あるということになります。
比劫大過の用神取得実例
以下は用神が食傷となる命式です。
辛 | 甲 | 己 | 庚 |
未 | 寅 | 卯 | 子 |
卯月・木旺に生まれ、比劫である木のエネルギーが大変強い命式です。また格局は健禄格(※健禄格は特別格局だが、普通格局と用神取得方法は同じ)となるため、用神は食傷の丁火です。甲にとって丁火は発火作用があるため、洩らす力が強いのです。また命式においては食傷の力が弱いため、特に食傷が発福の源となります。
以下は私の命式です。比劫が力を得ますが、食傷も強いため食傷は用神とはなりません。
壬 | 庚 | 己 | 辛 |
午 | 子 | 亥 | 酉 |
午・子沖去のため比劫の金が最強となります。格は食神格の身強ですが、食傷の水は既に強いため、用神とは取れません。財浅ですので、財が用神となります。用神は偏財の甲木です。
普通格局・身強の場合の基本的な用神の取り方を解説してきました。命式は種々あるため、実際は多くの命式を見ながら用神を取得する経験を重ねることが大切です。次回は特別格局の場合の用神取得方法について解説していきたいと思います。