日干の身強・身弱の判断方法~基礎編
今回から何回かに分けて「日干の身強・身弱の判断方法」と題して日主の強弱について論じていこうと思います。四柱推命を学ぶことにおいて、最も大きな壁がこの日干の強弱判断であり、多くの人が迷うところであると思います。
現在もこの日干の強弱については、命家によって様々な判断方法が取られていますが、概して単純な力量判断に陥るあまり、間違った方法が流布しているのが現状です。私も四柱推命を学びはじめた当初は、この日干の力量判断で随分と迷い、遠回りをしてきました。
おそらくこの記事を読まれる人の中でも、少し四柱推命をかじったことがある人なら、日干の強弱判断で迷いを生じられたことがあるかと思います。それはやはり、この日干の強弱判断については、具体的に語られた書がないからなのです。
私も様々な書物を読みましたが、日干の強弱判断については、具体的かつ正しい理論をもった書が非常に少なく、その多くが干支による単純な判断です。しかし単純に干支を数えるだけの判断では、正しく日干の強弱を見極めることは絶対にできません。
私もかつては日干の強弱判断が正確にできず、よく事象と合致しないということを経験しました。このため当記事ではまず、なぜその方法ではダメなのか?ということからはじめ、日干の強弱を正しく見極める方法を解説致します。
またいきなり日干の強弱判断の方法から入りますと、多くの人が混乱する可能性があります。このため今回の記事では理論的な解説は行わず、身強身弱判断の重要性など、基本的な解説から進めていこうと思います。
なぜ日干の身強・身弱を判断することがそれほど重要なのか?
まず、「なぜ日干の身強・身弱を判断することがそれほど重要なのか?」ということについてですが、これは以下の一言に尽きると思います。
用神を定めるため
四柱推命の真髄は、用神を定め、喜神・忌神を定め、それによってその者の一生の命運をうかがうことに尽きます。そして用神とは、日干の強弱によって定めることができるため、日干の強弱が分からないということは、用神も分からないということになるのです。
そして用神が分からないということは、喜神や忌神も分からないということになり、性質・事象を含め何もかも分からないということになりますから、日干の強弱判断は推命を行う上で大変重要な事柄と言えるのです。
つまり、もし日干の強弱判断を謝ると、用神を取り間違い、ひいては喜神と忌神が逆転するなど、全くの間違った結果を生じてしまう可能性があるということから、日干の強弱判断は大変重要となるのです。
そんな重要な日干の強弱判断ですから、とても慎重に行わなければいけません。
間違った日干の強弱判断方法
次は、私の経験から、日干の強弱を正しく測ることができない方法について解説しておこうと思います。以下であげる方法は、実際に四柱推命の解説書で語られており、私もその落とし穴にはまったものですが、それらの間違いを始めに知っておくことにより、私のような遠回りをしないですむようになります。
- 干支の八字の力量をすべて同じと考え、その数を数えて日干の力量を測る方法
- 十二運に頼り、地支に帝旺・建禄などの地支が多くあれば強、死・病などの地支が多くあれば弱と判断する方法
- 月支の旺衰を重く見、月令を得ているか、あるいは印が旺じていれば身強と判断する方法
- 以上の方法を複合させて判断する方法
以上は一例ですが、これら一つ一つについて、なぜそれが間違った方法であるのか?を解説していこうと思います。
「干支の八字の力量をすべて同じと考え、その数を数えて日干の力量を測る方法」について
天干と地支の力量は同じではないため、干支の八字の力量をすべて同じと考えること自体、既に誤りを含んでいます。また旺相死囚休を無視しますと、大きく誤りを生じる可能性があります。以下、実際の命運をあげてみましょう。
時柱 | 日柱 | 月柱 | 年柱 |
---|---|---|---|
癸(水) | 庚(金) | 己(土) | 庚(金) |
未(土) | 申(金) | 卯(木) | 子(水) |
分かりやすいように()内に五行を書き入れました。※地支は本気の五行です。干支を単純に同一の力量をもつとして計算すると、日干の庚金に対して、命式内には土と金の五行が多勢であるため、身強と判断できます。
しかし実際には、卯月木旺のため、金は囚令であり、土は死令のため、金や土のエネルギーは見た目ほど強くはなく、よって日干への生助も弱く、結果身弱となる命です。
また天干と地支においては、地支のほうが天干よりも力量が強いため、単純計算はできません。さすがにこのような単純すぎる方法を取る命家は少ないと思いますが、似たような判断方法を取っている者は多く、これではいつまで経っても日干の強弱は分からないと思います。
「十二運に頼り、地支に帝旺・建禄などの地支が多くあれば強、死・病などの地支が多くあれば弱と判断する方法」について
十二運(十二生長)は、すなわち地支の旺衰を正確にあらわすものではないため、身強・身弱の判断において、十二運を頼りにすること自体が間違っています。
また、さきほどの「干支の八字の力量をすべて同じと考え、その数を数えて日干の力量を測る方法」と、この十二運を見る方法の二つを組み合わせて日干の力量を測ろうとする人もいますが、ともに間違った方法であるため、正しく日干の力量を見極めることはやはりできません。
十二運については、【生旺墓絶(十二運)とはなにか】という記事で解説しています。
「月支の旺衰を重く見、月令を得ているか、あるいは印が旺じていれば身強と判断する方法」
これは最も単純で分かりやすい方法ですが、誤りを生じる可能性があります。月令を得ていればすなわち身強と判断する命家も多いのですが、月令を得ていても冲などで地支が去となれば身弱となる可能性は大いにあります。以下の命式をご覧ください。
時柱 | 日柱 | 月柱 | 年柱 |
---|---|---|---|
癸 | 辛 | 壬 | 癸 |
巳 | 卯 | 戌 | 丑 |
以上はイチロー選手の命式です。戊の土旺に生まれており、土の印が旺となる命であり、元局のままであれば身強と判断できる命式です。しかし、地支の卯・戌は支合の関係であり、なおかつ火化もしないため、結局合去となり、互いが無作用化します。これにより、日主の強弱は平弱程度となるのです。
つまり命式に合・冲があって去となる場合は、それらの干支を除いた上で力量の判断を行わなければ正確な強弱は分からないと言えます。
それではどのような判断を行えば、正確な日干の力量が出せるのでしょうか?次はそれについて解説していきます。
日干の強弱を導き出すための3つの要点
日干の強弱を出すための具体的な方法は次回からの記事に譲るとして、今回はそのポイントのみ解説しておきます。日干の強弱を出すためのポイントは以下の3つです。
- 天干・地支それぞれの五行の力量を具体的な数値で出す
- 上記で出た五行の数値をもとに、日干のエネルギー数値を算出する
- 最後に合・冲・生・剋などの理論を元に、日干の最終的な力量を出す
ということになります。言葉では簡単に聞こえるかもしれませんが、上記の3つのステップひとつひとつにおいて緻密な作業が必要であるため、次回からはこれらを一つずつじっくりと解説していきたいと思います。